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《論文紹介part. 7》(2024年11月)

Relationship between maternal egg consumption during lactation and the risk of developing egg allergies in 12-month-old infants: A multicenter cohort study が2024年11月にJapan Journal of Nursing ScienceにPublishされました!論文の概要を紹介いたします!

 食物アレルギーとは、食物たんぱくに対して、過剰な免疫反応が起きている状態です。乳児の食物アレルギーは世界的に問題となっており、日本の1歳児では、食物アレルギーのうち卵アレルギーが最も多く、5.3%が卵アレルギーだと報告されています。食物アレルギーの発症については、炎症のある皮膚から原因となる食物たんぱくが「経皮ばく露」されることによって免疫反応がおき、食物アレルギーを発症する一方で、経皮ばく露される前に、口から、つまり消化管に食物たんぱくが入ることで、アレルギー反応が抑制されるという仮説が提唱されています。

 卵アレルギーに関してもこの仮説は支持されていますが、授乳期早期の母乳を通じた児の卵摂取と卵アレルギー発症の関連については、十分に研究されていません。そこで、本研究では、授乳期早期の母の卵摂取量が、生後12か月の児の卵アレルギーの発症に関連するかどうか、児の授乳方法および湿疹を考慮して検討しました。

 産後1か月質問票から母の卵摂取量及び授乳における母乳育児の頻度について、生後6か月質問票から児の湿疹について、生後12か月質問票から児の卵アレルギー発症の有無についてのデータを、それぞれ収集しました。

 包含基準を満たした420名の児のデータを分析し、生後12か月時点で卵アレルギーの報告のあった児は27名(6.4%)でした。授乳方法及び湿疹で調整した母の卵摂取量は、児の卵アレルギーの発症との間に明らかな関連は見られませんでした。しかし、先行研究と同様に、生後6か月時点で湿疹のある乳児は、湿疹のない乳児と比べ、卵アレルギーを発症するリスクが有意に高くなっていました。このことから、児の母乳を通じた卵摂取の効果は確認できませんでしたが、湿疹を早期に治療するなど皮膚状態を良好に保つことが卵アレルギー発症予防にとって重要であると示唆されました。